脊髄損傷急性期に対する第III相臨床試験の速報結果のお知らせ
2024-02-09 · Kringle Pharma, Inc. · original kringle-pharma.com ↗
2024 年2月9日 各 位 会社名 クリングルファーマ株式会 社 住所 大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番 15 号 彩 都 バ イ オ イ ン キ ュ ベ ー タ 207 代表者名 代表取締役社長 安 達 喜 一 (コード番号:4884 東証グロース) 問 い 合 わ せ 先 取 締 役 経 営 管 理 部 長 村上浩一 TEL.072 -641 -8739 脊髄損傷急性期に対する第Ⅲ相臨床試験の速報結果のお知らせ 当社は、2020 年7月から2023 年12 月まで国内で実施しました脊髄損傷(※①)急性期患者に対して 組換えヒトHGF タンパク質製剤(KP-100IT、以下「HGF(※②)」 )を投与する第Ⅲ相臨床試験「脊髄損傷 急性期患者を対象としたKP-100IT の脊髄腔内投与による多施設共同非ランダム化検証的試験」 (試験計 画書番号:KP-100-ND004、以下「本試験」 )に関して、このたび速報結果を得たことから、今後、国内で の医薬品製造販売の承認申請に向けて本試験の結果をもとに規制当局との相談を進めてまいりますこと をご報告申し上げます。 本試験は、重症度がAIS 分類(※③)A の頚髄損傷完全麻痺患者を対象に、HGF を脊髄腔内に投与(受 傷後72 時間より週1回×5回)し、6ヵ月間観察を行う非ランダム化検証試験です。本試験には全26 例 が本登録され、うち25 例が有効性の評価対象となりました。 本試験における主要評価項目は、AIS 分類A の頚髄損傷完全麻痺患者が治験薬投与後6ヵ月にAIS がC 以上に改善した割合、つまり、知覚・運動ともに完全麻痺の状態から損傷レベルより下位に運動機能が 残存するまで回復した症例の割合という厳しい基準を予め設定し、総合せき損センターの保有する患者 データベース(※④、以下「本データベース」)との比較解析を行いました。 今回実施した統計解析において、以下の結果を確認しました。 ⚫ 治験薬投与後6ヵ月のAIS C 以上への改善割合は12.0%であり、統計学的有意差は認められません でしたが、本データベースのAIS C以上への改善率8.6%を上回りました。 ⚫ 治験薬投与後6ヵ月のAIS B 以上への改善割合は56.0%であり、本データベースのAIS B 以上の改 善率19.8%に対して統計学的に有意な高い改善率を示しました。 ⚫ 運動機能評価の指標であるASIA motor score(※⑤)の合計点は、HGF 投与前に比べ、HGF 投与後6 ヵ月において平均7.1±5.7 点の改善を示しました。 ⚫ 安全性について、HGF 投与による死亡や重篤な副作用例は認められませんでした。また、抗HGF 抗体 の産生は認められませんでした。 統計解析の結果、予め設定した主要評価項目において統計学的有意差は認められませんでしたが、 この 背景として、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の解析集団と比較したところ、受傷原因として転倒・転落例が減った一 方で、 受傷のダメージがより大きい交通事故などが多い傾向が認められました。 このような差異が生じた 原因のひとつとして、 症例組入れが、新型コロナウイルス (COVID-19) 感染症の拡大に伴い全国民が行動 制限する中で行われたことが大きく影響したと考えられます。また、 予後不良因子 (自然回復の起こりに くい指標)と報告されている受傷72 時間後の血中 CRP(※⑥)値の閾値を超える症例が、本試験では多 く含まれていました。これらのことから、本試験では患者背景が第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験時とは異なる可能性 が示唆されました。 しかしながら、 本試験においても、HGF の治験薬投与後6ヵ月に知覚・運動ともに完全麻痺の状態から 損傷レベルより下位に知覚が残存するまでに回復した症例の割合が統計学的に有意な高い結果を示して いることから、当社はHGF の脊髄損傷急性期に対する有効性は示されたと考えております。 現在有効な治療薬が存在しない脊髄損傷急性期に対する医薬品開発の重要性に鑑み、今後、 患者背景の 差異を考慮して更なる層別解析を行うなど、引き続き本試験データの詳細解析を行うとともに、2024 年 内を目標に医薬品製造販売の承認申請に向けて準備を進めてまいります。 本試験の結果を受け、治験調整医師である慶應義塾大学医学部整形外科中村雅也教授は次のように述 べております。 「本試験期間では、新型コロナウイルスの流行に対する活動自粛の影響によって脊髄損傷の発生率は低 下し、 想定よりも損傷の激しい高エネルギー外傷の患者が多く登録された結果、主要評価項目において統 計学的有意差が得られなかった可能性があります。 一方で、本試験では約半数がAIS B 以上の不全麻痺に 改善しました。AIS A の患者は殆どが完全麻痺の状態のままですが、HGF によって半数が不全麻痺となっ たことは急性期治療の二次損傷の抑制・脊髄神経保護を示す結果と言えます。急性期のHGF 治療により、 リハビリテーションや現在開発が進められている細胞移植療法の効果を高めることが期待されます。 」 また、当社代表取締役社長の安達喜一は次のように述べております。 「新型コロナウイルスの流行下の中、 当初の想定以上に患者登録に時間を要しましたが、 無事に本試験を 終えることができました。ご協力いただきました関係者の皆様には改めて御礼申し上げます。 本試験では脊髄損傷急性期患者に対するHGF 投与の安全性が示されました。 有効性については、複数の指 標で良好な結果が示唆されております。 脊髄損傷の急性期治療では、 二次損傷による脊髄神経の細胞死を いかに減らすことができるかが第一の課題であり、本試験によりHGF が急性期治療薬となり得ることが 検証されたと考えます。 私たちは一日でも早く患者の皆様に治療薬をお届けできるよう、国内での製造販 売承認申請に向けて全社一丸となって努力してまいります。また、 現在進めている米国での治験準備につ きましても引き続き継続していく所存です。」 以上 ※① 脊髄損傷について 脊髄の外傷による損傷のことで、 受傷原因は平地転倒 ・ 交通事故 ・ 転落などが多いとされています。 近 年は、 人口の高齢化に伴い、 転倒による受傷が増加傾向にあります。 国内では、 年間に約6千人の脊髄損 傷患者が発生しており、慢性期までを含めた患者総数は10~20 万人と言われています*。 適切な初期治療と専門的なリハビリテーションにより一定の回復が望めますが、運動麻痺や筋の痙性、 拘縮、 知覚麻痺、 体幹内臓機能不全 (膀胱直腸障害、 発汗体温調節機能障害、 内臓機能低下、 呼吸機能低 下)などの複合した重度の後遺障害が残る場合が多く、治療薬の開発が強く望まれています。 *出典:Miyakoshi et al. Spinal Cord 2021 Jun;59(6):626-634. 坂井宏旭ら「わが国における脊髄損傷の現状」(2010) ※② HGF(Hepatocyte Growth Factor, 肝細胞増殖因子)について HGF は、 成熟肝細胞の増殖を促進する因子として発見された生理活性タンパク質であり、 その後の研究 から細胞増殖のみならず、細胞運動促進、抗細胞死、 形態形成誘導、血管新生など様々な組織・臓器の 再生と保護を担う多才な生理活性を有することが明らかにされました。 HGF は神経保護作用や軸索伸展作用も有し、 神経難病とされる脊髄損傷に対する薬理効果は、 慶應義塾 大学医学部生理学教室 岡野栄之教授及び整形外科学教室 中村雅也教授らのグループの研究により明ら かにされています。新たな脊髄損傷治療薬として、HGF への期待が高まっています。 他方、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室 平野滋教授らのグループは、HGF の抗線維化 作用に着目し、 線維化疾患である声帯瘢痕に対する薬理効果を明らかにしました。HGF には、 声帯瘢痕を 端緒として、他の線維化疾患への適応拡大の可能性が期待されています。 ※③ AIS 分類について 米国脊髄損傷協会 (American Spinal Injury Association、 ASIA)によって、脊髄損傷の重症度を評価 する国際基準としてASIA 機能障害尺度 (ASIA impairment scale: AIS) が作成されました。 AIS A =(完全麻痺)S4~S5 の知覚・運動ともに完全麻痺 B =(不全麻痺)S4~S5 を含む損傷レベルより下位に知覚機能のみ残存 C =(不全麻痺)損傷レベルより下位に運動機能は残存しているが、主要筋群の半分以上 が筋力3 未満 D =(不全麻痺):損傷レベルより下位に運動機能は残存しており、主要筋群の少なくと も半分以上が筋力3 以上 E = 正常:運動・知覚ともに正常 ※④ 総合せき損センターの患者データベースについて 福岡県飯塚市にある独立行政法人 労働者健康安全機構 総合せき損センターは、急性期から社会復帰 まで一貫して治療を行う国内最大の脊髄損傷専門病院です。脊髄損傷治療に活用可能な高精度のデータ 収集を目的としてデータベースシステムを構築し、2005 年より運営が開始されています。これまで総合 せき損センターの1施設の情報が集積されていますが、専門病院として評価者の高い熟練度や評価時期 を統一化された高精度のデータベースと言えます。最近では、 リアルワールドデータ ・ 疾患レジストリを 活用した医薬品開発が注目されており、本データベースも多くの治療法開発に活用されることが期待さ れています。 ※⑤ ASIA motor score について 米国脊髄損傷協会による運動機能を評価する指標で、上肢(50 点)と下肢(50 点)の運動機能スコア の合計(100 点)で構成されます。脊髄の各部位に関連した主要筋肉が動くかどうかを点数化したもの です。実施が容易で再現性が高いことなどを理由に広く普及している脊髄損傷急性期の評価項目です。 ※⑥ CRP について C 反応性タンパク質のことで、感染症、外傷、炎症等によって血中で上昇することが知られています。 脊髄損傷では、受傷72 時間でCRP 値が10.41 mg/dlを超える症例は自然回復が認められず、予後不良因 子として報告されています。 *出典:Ozaki et al. Spinal cord 2021 Nov;59(11):1155-1161. クリングルファーマ株式会社について https://www.kringle-pharma.com/ 当社は「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、 難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供 し、 社会に貢献すること」 を企業理念とし、希少疾病を対象にHGF タンパク質医薬品の自社開発を推進す るバイオベンチャー企業です。 現在、HGF タンパク質医薬品のレイトステージの開発パイプラインでは、脊髄損傷急性期を対象とする 開発が第Ⅲ相臨床試験を終了し、声帯瘢痕を対象とする開発は第Ⅲ相臨床試験を実施中です。 当社は、HGF タンパク質性医薬品の社会実装を通じて新たな価値を創造し、 人々の健康と幸せに貢献し てまいります。
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